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MATCH法案・半導体装置・重要鉱物を続けて読む

対中規制と供給網の詰まりを、半導体装置、輸出規制、重要鉱物でつなげて見ます。

要旨

  • Resilireの製造業向け調査では、回答者の90.8%が何らかの素材で入手難を経験し、平均調達充足率は67.9%だった。
  • 同調査では、88.2%が生産または納品への影響を挙げ、平均調達コストは22.3%上昇したと回答した。中国依存度の平均は61%だった。
  • この調査は公的統計ではなく、調査会社によるオンライン調査である点に留意が必要だが、不足、業務影響、コスト上昇を同じ標本で示した点は、現場の実務課題を読む材料になる。

中国依存のリスクは以前から語られてきたが、現場で何が起きているかは別の問題だ。Resilireが2026年7月15日に公表した製造業の調達・購買意思決定者400人調査は、レアアースを含む重要素材の不足が、単なる将来不安ではなく、すでに調達充足率、生産計画、納期、コストに影響していることを示した。

ただし、この数字をそのまま日本の製造業全体の実勢として扱うのは早い。調査会社によるオンライン調査であり、公的統計ではないからだ。その前提を置いたうえで読むと、この調査の価値は、価格高騰の話だけでは見えにくい実務上のボトルネックを一つの標本で並べている点にある。

1. 数字で見える不足の実態

製造業が調達するレアアース関連素材

PR TIMESで公表されたResilireの調査結果によると、製造業の調達・購買意思決定者400人のうち、90.8%が何らかの素材で入手難を経験していると答えた。平均調達充足率は67.9%で、必要量を十分に確保できていない状態が広くみられたとされる。

同じ調査では、88.2%が生産または納品への影響を挙げ、平均調達コストは22.3%上昇したと回答した。中国依存度の平均は61%だった。ここで見えているのは、素材の不足が価格だけの話ではなく、納期や生産計画の問題として現場に表れていることだ。

もっとも、この調査は政府統計ではなく、調査会社によるオンライン調査である。したがって、日本の全製造業を代表する数字だと断定することはできない。一方で、入手難、充足率、生産・納品への影響、コスト上昇を同じ標本で測っているため、現場の負荷がどこに集中しているかを考える材料にはなる。

表1 調査で示された主な数字
項目 調査で示された数字 読み取れること 留意点
入手難の経験 90.8% 多くの回答者が何らかの素材不足を感じている 不足した素材の内訳は公表記事だけでは限定的
平均調達充足率 67.9% 必要量を十分に確保できていない企業が多い 平均値であり業種差や企業規模差は別途確認が必要
生産・納品への影響 88.2% 不足が現場業務に波及している 影響の深さや期間は追加資料で見極める必要がある
平均調達コスト上昇 22.3% 価格負担が実務上の課題になっている 個別素材ごとの差は公表記事だけではわからない

出所: Resilireが2026年7月に公表した資料。公的統計ではなく、製造業の調達・購買意思決定者400人を対象としたオンライン調査。

2. なぜ在庫があっても生産と納品が止まるのか

レアアースを使う電動機部品の製造ライン

素材不足の報道は、しばしば在庫が足りるかどうかに焦点が当たりやすい。だが、調達担当者の実務では、在庫があるだけでは十分ではない。必要な品質の材料を、必要な仕様で、必要な時期に受け取れるかどうかが問題になる。

今回の調査は素材全般を対象としているが、レアアースを含む重要素材でも、代替材が見つかってもすぐに置き換えられるとは限らない。顧客仕様への適合確認、部品表の更新、二次・三次サプライヤーまで含めた原産地や調達経路の確認、納期再調整が必要になる場合がある。今回の調査で生産・納品への影響が88.2%に達したという結果は、こうした運用面の負荷が広く表面化している可能性を示している。

平均調達コスト22.3%上昇という数字も、単純な市況高だけでなく、スポット調達、輸送条件の変更、追加在庫、代替先の探索といった実務コストを含めて読む必要がある。価格だけを見ていると、現場で何が詰まっているかを見誤りやすい。

3. 中国依存率だけでは測れない供給網の弱点

在庫制約を抱える産業用倉庫

調査では、中国依存度の平均が61%とされた。この数字は重いが、依存率だけでは実際の脆弱性を測りきれない。重要なのは、どの素材が中国に依存しているかだけでなく、その素材がどの部品に入り、その部品がどの工程や顧客仕様に結びついているかだ。

一次サプライヤーを切り替えられても、二次・三次サプライヤーの段階で中国依存が残っていれば、表面上の多角化は十分に機能しないことがある。部品表の可視化が不十分な企業では、素材不足が起きた後に初めて依存箇所が判明することも珍しくない。

このため、供給網の問題は『中国依存を下げる』という一文では終わらない。依存の深さ、代替先の認証状況、顧客との納期調整余地、素材から部品までの見える化の程度を分けて点検する必要がある。関連記事では、[中国の5月のレアアース輸出低迷、日本の工場リスクはどこに出るのか](/articles/china-rare-earth-may-export-zero-japan-factory-risk) と [中国の重希土類停止で日本のどの部品が詰まるのか](/articles/china-heavy-rare-earth-cutoff-japan-magnet-risk) が、品目別の詰まり方を整理している。

表2 依存率の数字だけでは見えにくい確認項目
確認項目 なぜ必要か 現場で起きやすい問題 優先して見る資料
二次・三次サプライヤーの依存 一次調達先の変更だけでは実態が変わらないため 隠れた中国依存が後から見つかる 部品表、原産地情報、サプライヤー申告
代替材の認証状況 代替候補があっても量産投入できるとは限らないため 顧客承認や品質確認で切り替えが遅れる 品質保証資料、顧客仕様、試験結果
納期再調整の余地 不足時の被害を和らげる余地が違うため 顧客への回答が遅れ、受注調整が必要になる 受注残、納期回答、主要顧客との契約条件
素材から部品までの可視化 不足箇所の特定速度が変わるため 問題発生後までボトルネックが見えない BOM、調達台帳、供給網マップ

供給網の弱点は、依存率の高さだけでなく、どこまで見えていて、どこまで切り替え準備が進んでいるかで変わる。

4. 日本企業が今進めるべき四つの実務対応

第一に、素材名ではなく、部品表と顧客仕様まで降りた影響確認が必要だ。レアアース不足といっても、全製品に同じ強さで影響するわけではない。

第二に、代替材と代替調達先の候補について、調達可能性だけでなく認証済みかどうかを切り分けて管理する必要がある。候補があることと、量産に使えることは同じではない。

第三に、一次サプライヤーだけでなく、二次・三次サプライヤーまで含めた依存確認を急ぐべきだ。見えない依存は、価格上昇より先に納期遅延として表れやすい。

第四に、顧客との納期調整と価格転嫁の条件を早めに整理することが重要になる。調達部門だけで抱え込むより、営業、品質保証、生産計画を含めた横断運用が必要になる局面だ。

5. 調査の限界と、次に見るべき公的資料

今回の調査は、調達担当者の認識と経験を同じ標本で集めている点に価値がある一方、公的統計ではないため、結果の使い方には慎重さが要る。業種別の偏り、企業規模の偏り、個別素材の内訳、影響期間の違いまでは、PR TIMESの公表内容だけでは十分に確認できない。

次に優先して確認したいのは、Resilireが案内している詳細レポートの設問と調査手法、日本政府の重要鉱物安定供給策、そして税関統計や企業開示のような一次資料だ。制度面では、経済産業省の [重要鉱物に係る安定供給確保を図るための取組方針](https://www.meti.go.jp/policy/economy/economic_security/metal/index.html) が背景になる。供給網全体を広く見たい読者には、[重要鉱物マップで見る日本の供給網](/articles/critical-minerals-map-japan-beyond-rare-earths) も補助線になる。

6. Sekai Watch Insight

ここからは編集部の見立てだ。今回の調査が示しているのは、レアアース問題の焦点が『価格が上がるか』から『供給網を運用できるか』へ移っていることだと考えられる。備蓄は時間を買うが、代替材の認証、二次調達先の確保、部品表の可視化、顧客との納期調整をそれ自体で代替できるわけではない。

その意味で、日本企業の差は調達先の数よりも、素材不足が起きたときにどこまで早く影響箇所を特定し、代替案を実務に落とせるかで出やすい。中国依存を減らす議論は重要だが、足元では『見えているか』『認証済みか』『顧客と調整できるか』の三点を持っている企業の方が、実害を小さく抑えやすい。

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