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LNG・ホルムズ・サハリンを続けて読む

エネルギー輸入の詰まり方を、海峡、ロシアLNG、豪州代替調達に分けて追えます。

要旨

  • 共同通信が報じた5月の貿易統計では、日本の原油輸入量が前年同月比57.3%減る一方、円建ての原油輸入単価は過去最高になった。
  • 中東からの原油輸入量は61.9%減り、主にナフサを含む中東からの石油製品輸入も90.0%減った。米国などからの代替調達は進んでいるが、数量の穴埋めとコスト低下は同じ意味ではない。
  • 日本で見るべき論点は、原油が届くかだけではなく、輸送費、保険、石油化学原料、燃料補助、企業収益にどの順番で波及するかである。

日本の5月の貿易統計は、ホルムズ海峡をめぐる緊張が日本経済にどう伝わるかを、かなり具体的に見せた。原油輸入量は大きく落ちた。ところが、円建ての原油輸入単価は過去最高になった。つまり、輸入量が減ったから負担も軽くなった、とは読めない。

ここで重要なのは、戦争の先行きを予想することではない。すでに出た統計から、影響の経路を分けることだ。原油そのもの、輸送と保険、ナフサなどの石油化学原料、企業の採算、家計への価格転嫁は、同じ統計や報道に含まれる論点でも、影響が出るタイミングは違う。

1. 原油は量が減り、単価は上がった

Editorial image of tanker, refinery, and port logistics

共同通信が2026年6月17日に報じた5月の貿易統計では、日本の貿易収支は3786億円の赤字だった。原油輸入量は前年同月比57.3%減の473万キロリットルとなり、中東からの原油輸入量も61.9%減った。

一方で、原油の円建て輸入単価は1キロリットルあたり11万4076円となり、前年同月比67.2%上昇して過去最高を記録した。輸入量が減っているのに単価が上がるのは一見矛盾して見えるが、輸入量の減少と単価の上昇は同時に起こりうる。調達先、輸送条件、保険、為替、契約条件が変われば、より少ない数量を、より高い条件で調達する局面が生まれるからだ。

表1 5月の貿易統計で確認された主な変化
項目 報じられた数字 読み方
原油輸入量 前年同月比57.3%減、473万キロリットル 数量面では大きな落ち込みが出た
中東からの原油輸入量 前年同月比61.9%減 日本の主要調達地域で減少が目立つ
原油輸入単価 1キロリットルあたり11万4076円、前年同月比67.2%上昇 数量減だけでは負担を判断できない

数値は、共同通信英語版による2026年6月17日の報道に基づく。

2. 代替調達は数量を助けるが、価格を自動的には下げない

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中東以外からの調達は、日本にとって重要な安全弁になる。米国、マレーシア、ブルネイなどからの購入が増えれば、特定の海域や地域への依存を一部薄められる。

ただし、代替調達が進むことと、輸入コストが下がることは同じではない。輸送距離、船舶保険、船賃、品質、契約期間、為替の条件が変われば、量を確保しても単価が高止まりすることがある。今回の記事で見るべきなのは、供給がゼロになるという話ではなく、供給を維持するための費用が、どの費目に上乗せされ、誰の負担になるかという点だ。

3. ナフサの落ち込みは石油化学原料の問題として見る

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共同通信は、主にナフサを含む石油製品についても、中東からの輸入が前年同月比90.0%減の13万6000キロリットルになったと報じた。一方、米国からの購入は569.6%増えた。

ナフサは石油化学製品の原料として使われる。ここを見落とすと、影響をガソリンや電気代だけで考えてしまう。プラスチック、合成繊維、包装材などにつながる原料コストは、家計にすぐ見えなくても、企業の採算悪化や製品価格の上昇として、遅れて表面化する可能性がある。

もちろん、5月の数字だけで国内の石油化学製品不足を断定することはできない。確認すべきなのは、ナフサの調達量、在庫、国内の石油化学各社の稼働、輸入単価の変化である。

4. G7での発言は軍事予告ではなく、航行安全の政治メッセージだ

NHK WORLDによると、高市首相はG7閉幕時、中東情勢によるエネルギー供給の不確実性が世界経済の重荷になっていると述べた。また、ホルムズ海峡を含むすべての海上交通路で、自由で安全な航行を確保する必要があると強調した。

同じ報道で、首相は自衛隊派遣について何も決まっていないとも述べている。したがって、ここで読み取れるのは、ただちに軍事行動へ向かうという話ではない。日本政府が、エネルギー調達と海上交通の安全を国際政治の主要論点として扱っている、ということだ。

5. 次に見るべき日本向けの数字

次に確認すべきなのは、7月以降の原油輸入量、ナフサの調達量、燃料小売価格、燃料補助の扱い、石油化学製品の価格、船舶保険や船賃の動きだ。5月の統計だけで供給危機を断定するのは早いが、コスト上昇がすでに統計に出たことは軽く見られない。

Sekai Watchの見立てでは、焦点は「日本に原油が届くか」から、「届かせるための費用を誰がどの程度負担するか」へ移っている。家計には燃料や電気料金を通じて、企業には原料費や物流費を通じて、別々の速度で影響が出る可能性がある。

表2 日本で追うべき次の確認点
確認点 見る理由
7月以降の原油輸入量 数量の落ち込みが一時的か、継続的かを確認する
ナフサの調達量と価格 石油化学原料への波及を確認する
燃料補助と小売価格 家計への転嫁がどこまで抑えられるかを見る
船舶保険と船賃 ホルムズ周辺の緊張が物流費に残っているかを見る

不足を先に断定するのではなく、数量、価格、物流費を分けて追う必要がある。

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