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LNG・ホルムズ・サハリンを続けて読む

エネルギー輸入の詰まり方を、海峡、ロシアLNG、豪州代替調達に分けて追えます。

要旨

  • Reutersが4月15日に伝えたところによると、ラブロフ外相はロシアには中国と他国の資源不足を埋める用意があると述べた。日本向けの話ではないが、アジアの需給を読むうえでは無視しにくい発言だ。
  • 経済産業省は3月24日に国家備蓄原油の放出を公表し、4月7日の赤沢経済産業相会見でも代替調達と物流面の管理を続けている状況を説明した。日本はすでに、平時の調達だけでは賄いきれない局面に入っている。
  • 日本にとって問題なのは、ロシア産が直接入るかどうかではなく、中国がロシア産をより吸収しやすくなるほど、アジアのスポット市場で使える代替的な調達先が減りやすいことだ。

ロシアが中国向けにエネルギー増供給の用意を示したからといって、日本にロシア産原油が回ってくる、あるいは日本向け供給が直ちに減る、という話ではない。重要なのは、この発言がアジア市場で中国の調達先の選択肢を広げうること、そしてその分だけ日本が頼れる代替調達の余地が狭まりやすいことだ。

日本政府はすでに備蓄放出と代替調達を進めている。したがって今回の論点は絶対量の不足を煽ることではなく、中東不安が続く局面で、どこからでも買えるという柔軟性がどれだけ縮むのかを見極めることにある。

1. ロシアの対中増供給示唆は何を意味するのか

Large oil tanker at dawn in a cold port

Reutersが4月15日に伝えたところによると、ロシアのラブロフ外相は、プーチン大統領の訪中を前に、ロシアには中国と他国の資源不足を埋める用意があると述べた。ここで確認できる事実は、ロシア側が中国向けを含む追加供給の用意を政治的に打ち出したことだ。

この発言だけで実際の追加輸出量や契約条件までは分からない。したがって、供給がどれだけ増えるかを断定するのは早い。ただし、アジアの大口買い手である中国に対して、ロシアが引き続き受け皿を提供する姿勢を示したこと自体は、市場参加者にとって需給のメッセージになる。

表1 今回の発言から読み取れることと、まだ読めないこと
論点 確認できる事実 まだ分からない点 日本への関係
ロシアの姿勢 中国と他国の資源不足を埋める用意があるとラブロフ外相が発言した どの資源をどれだけ増やすのか、数量や時期は示されていない アジアで中国の調達選択肢が厚くなる可能性を意識させる
中国向け供給 ロシアが対中供給を拡大しうるという政治メッセージが出た 実際の契約増や輸送手当てがどこまで進むかは未確認 中国が中東以外の選択肢を持つほど、日本の代替調達は競争が厳しくなりやすい

Reutersの4月15日報道をもとに整理。発言そのものと、数量面の未確定要素は分けて読む必要がある。

2. なぜそれが日本の調達余地を狭めるのか

Refinery pipeline maze under winter haze

日本にとっての本筋は、ロシア産原油が直接増えるかどうかではない。中国がロシア産エネルギーをより引き受けやすくなるほど、中国は中東不安の局面でも別の調達先を持ちやすくなる。その結果、中東以外も含めたアジア全体で貨物の争奪が激しくなり、日本がスポット市場で使える代替的な調達先は減りやすい。

つまり、日本が直ちに原油不足に陥るという話ではない。問題は、価格が上がっても船腹を確保して別の供給源へ乗り換える柔軟性が弱まることだ。中国がロシア産を吸収できるほど、日本は米国産やホルムズ海峡を通らない中東産原油、備蓄放出への依存を強めやすくなり、代替調達のコストが構造的に高くなりやすい。

図1 日本の調達柔軟性を圧迫しやすい要因
アジアの買い手競争極めて高い

中国の吸収力が高いほど、日本のスポット調達余地は狭まりやすい

長距離調達の船腹負担高い

代替先が遠いほど、輸送日数と船腹確保の負担が増える

備蓄への依存やや高い

短期の緩衝材にはなるが、柔軟な市場調達の代わりにはなりにくい

価格上昇への耐性やや高い

買えないというより、高くつく形で圧力が残る

今回の論点に照らして、相対的に重い要因を並べたもの。実測値ではなく優先度の整理である。

  • 今回の焦点は供給断絶の断定ではなく、選べる調達先が減ることにある。
  • 価格だけでなく、船腹と調達先の多様性をあわせて見ないと実務の負担を見落としやすい。

3. 日本はどの代替手段で埋めているのか

Commodity procurement desk with abstract energy route map

経済産業省は3月24日、国家備蓄原油を850万キロリットル放出する計画を公表した。4月7日の赤沢経済産業相会見でも、代替調達が進んでいる一方で、物流や供給のボトルネックを丁寧に管理する必要があるという趣旨の説明がなされている。日本はすでに、備蓄を使いながら複数の代替経路を回す段階に入っている。

また、4月10日のReuters配信記事では、日本は5月までに輸入の過半をホルムズ海峡以外からの調達に切り替える見通しがあると伝えられ、米国からの原油増加も、補足材料として示された。ここから見えるのは、日本の安全弁が『市場でどこからでも安く買えること』ではなく、備蓄、非ホルムズ調達、米国産の積み増し、長距離輸送を組み合わせる高コストな代替体制に移っているという現実だ。

表2 日本がすでに使っている主な安全弁
手段 確認できる内容 利点 限界
国家備蓄放出 METIは850万キロリットルの放出計画を公表した 短期の供給ショックを和らげやすい 恒久的な調達先の代わりにはならない
非ホルムズ調達 Reuters配信では、5月までに輸入の過半をホルムズ以外へ切り替える見通しが示された 海峡リスクを相対的に下げられる 輸送距離やコスト、船腹負担は重くなりやすい
米国産原油の活用 Reuters配信では、米国からの原油増加も補足材料として示された 中東以外の選択肢を確保しやすい 長距離輸送の負担と価格条件の管理が必要になる

METI公表資料とReuters配信をもとに整理。日本はすでに非常手段を組み合わせて調達を回している。

4. Sekai Watch Insight

Shipping terminal with containers and oil drums

ここからはSekai Watchの見立てである。日本の問題は、原油が足りなくなるかどうかより、選べる調達先が減ることにある。ロシアが中国向け増供給を示唆すると、中国は中東不安の局面でも別の選択肢を持ちやすくなる一方、日本は備蓄と長距離調達への依存を強めやすい。

その結果、日本のエネルギー安全保障は、数量の確保そのものより柔軟性の確保が難しくなる。高くても買える余地が狭まり、代替のたびに船腹、輸送日数、調達コストの負担が積み上がるからだ。今回のニュースは、ロシアと中国の関係そのものより、アジアで買い手間の競争が激しくなることで日本の選択肢がどう狭まるかという視点で追う方が実務的である。

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