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MATCH法案・半導体装置・重要鉱物を続けて読む

対中規制と供給網の詰まりを、半導体装置、輸出規制、重要鉱物でつなげて見ます。

要旨

  • 中国は2026年5月20日、国務院令第839号として鉱物資源法実施条例を公表した。条例は6月15日から施行される予定で、鉱業権、探査・採掘、鉱山生態修復、鉱物資源備蓄、緊急対応、監督管理などを扱う。
  • 条文では、戦略性鉱物を探査、採掘、選鉱、製錬加工、貿易、利用まで含む全チェーンで管理する考え方や、製品備蓄、能力備蓄、産地備蓄、外資安全審査、輸出管理との接続が示されている。
  • 日本にとっての論点は、対日輸出の詰まりを個別の外交摩擦だけで読むのではなく、中国国内法制が上流から資源を交渉材料にできる仕組みを作る動きとして読むことにある。

レアアース問題は、税関の出口だけで始まるわけではない。鉱山権、採掘、加工、備蓄、外資審査という入口側の制度が変われば、輸出許可の出方や企業の調達余力も後から変わる。中国が公表した鉱物資源法実施条例は、その入口側を読むための資料になる。

ただし、条例そのものが日本向け輸出停止を命じている、と読むのは雑すぎる。条文が示す制度設計と、対日輸出が止まっているとの報道は分けて見る必要がある。そのうえで日本企業が確認すべきなのは、輸出許可の件数だけでなく、中国が戦略性鉱物をどこまで上流から統制できる仕組みにしているかだ。

1. 何が変わったのか

Critical minerals reserves and supply chain controls

新華社は2026年5月20日、国務院令第839号として鉱物資源法実施条例が公布されたと伝えた。条例は5月9日の国務院常務会議で通過し、6月15日から施行される予定だ。China Dailyが掲載したXinhuaの記事は、新条例が鉱業権制度、探査・採掘、鉱山生態修復、鉱物資源備蓄、緊急対応、監督管理を改善するものだと説明している。

重要なのは、これを単なる鉱山行政の更新として終わらせないことだ。公開されている条文で確認できる第5条は、戦略性鉱物について、探査、採掘、選鉱、製錬加工、貿易、利用までを含む全チェーン管理を掲げている。これは、輸出許可だけではなく、鉱物が掘られ、加工され、備蓄され、取引される前段階から政策対象にする考え方だ。

表1 中国の鉱物資源法実施条例で確認すべき主な点
項目 条文・報道で確認できること 日本側の読み方
施行時期 2026年6月15日施行予定 施行後の運用通知や対象鉱物リストを追う
全チェーン管理 戦略性鉱物を探査から利用までつなげて扱う 輸出許可だけでなく、上流の制度変更を見る
備蓄 製品、能力、産地の備蓄が条文で示されている 在庫日数だけでなく、中国側の供給調整余地を見る
外資審査 外資による鉱物資源の探査・採掘は安全審査と結びつく 日本企業や同盟国案件の上流投資リスクを見る
輸出管理 輸出管理制度との接続が明記される 通関だけでなく、国内統制と輸出管理を一体で読む

条例の焦点は、鉱物を単なる商品ではなく、国家安全保障と産業政策にまたがる資源として扱う点にある。

2. 制度が押さえる範囲は輸出許可より広い

Critical minerals reserves and supply chain controls

条文で目立つのは、備蓄と安全審査の位置づけだ。第54条は製品備蓄、能力備蓄、産地備蓄に触れ、第57条は産地備蓄を扱う。備蓄という言葉は、単に倉庫に在庫を積むという意味だけではない。供給能力や産地そのものを政策上の調整対象として見る発想が含まれる。

第74条は外資安全審査、第75条は輸出管理との接続を示している。つまり、外国企業が上流に入る場合の審査と、鉱物が国外へ出る段階の管理は、同じ制度環境の中で把握する必要がある。日本企業にとっては、輸出許可の遅れだけを追うと、制度の半分しか見えない。

表2 日本企業が見るべき確認項目
確認項目 見たい資料 なぜ重要か
戦略性鉱物の指定 中国当局のリスト、実施細則、関連通知 対象に入る鉱物で調達リスクの優先順位が変わる
備蓄の運用 産地備蓄、能力備蓄、緊急対応に関する公表資料 市場価格より先に供給余力が政策で動く可能性がある
外資安全審査 審査対象、基準、承認事例 上流投資や合弁案件の予見可能性に関わる
輸出管理の実務 許可件数、通関統計、企業の納期説明 制度変更が実際の出荷に反映されているかを見分ける

日本側の実務では、通関統計、企業発表、中国当局の実施細則を合わせて読む必要がある。

3. 日本への影響は磁石、半導体、防衛、EVに時間差で出る

Critical minerals reserves and supply chain controls

Reuters配信記事を掲載したMining Weeklyは、中国が少なくとも4か月、日本向けの重希土類やガリウムなどをほぼ止めており、台湾をめぐる外交摩擦と重なっていると伝えた。これは条例そのものの効果ではなく、対日輸出をめぐる別の報道として分けて扱う必要がある。

それでも、日本への意味は大きい。重希土類は高性能磁石に関わり、磁石は自動車、産業用モーター、防衛、航空などの供給網に入る。ガリウムは半導体や電子部品の供給網で重要になる。こうした素材は、止まった瞬間にすべての工場が止まるとは限らないが、在庫、認証、代替調達、顧客への供給責任の順に時間差で効いてくる。

前回の赤沢APEC記事で焦点にしたのは、対話チャンネルと輸出許可の回復だった。この記事の焦点はそこではない。ここで見るべきなのは、中国側の国内法制が鉱物を上流から政策上の交渉材料にする流れであり、外交接触だけでは消えない構造的なリスクだ。

4. 日本側は在庫と代替調達だけでは足りない

日本企業の最初の対応は、在庫日数、代替サプライヤー、顧客への納期説明になる。それは必要だが、今回の条例を読む限り、それだけでは足りない。中国が上流の探査、採掘、加工、備蓄、外資審査を制度としてつなげるなら、日本側も上流投資、長期契約、価格下支え、同盟国案件の事業継続性まで見なければならない。

関連する論点は、すでに別の記事でも扱っている。対日輸出量の落ち込みは「中国レアアース磁石の輸出減少を日本はどう読むか」で、鉱物全体の地図は「重要鉱物マップで見る日本の供給網」で、G7側の資金・価格下支えの論点は「G7と重要鉱物」で読むと整理しやすい。今回の記事は、その上に中国国内法制という層を重ねる位置づけだ。

5. 次に見るべき一次資料

まず見るべきは、6月15日の施行後に出る運用通知や実施細則だ。特に、戦略性鉱物のリスト、備蓄の対象、外資安全審査の基準、輸出管理との接続がどこまで具体化されるかを見る必要がある。条文だけでは、どの鉱物がどの程度厳しく扱われるかまでは読み切れない。

次に見るべきは、通関統計と企業側の納期説明だ。中国側の制度が強まっても、実際の供給影響は品目ごと、企業ごとに違う。Lynas や JOGMEC 関連案件のような非中国ルートについても、数量、品質、認証、長期契約の条件を見なければ、代替調達がどこまで効くかは判断できない。

6. Sekai Watch Insight

編集部の見立てでは、今回の条例の意味は「中国が明日すべてを止める」という話ではない。そう読むと、かえって実務判断を誤る。重要なのは、中国が鉱物を国家安全保障のインフラとして管理する制度を、輸出の前段階から整えていることだ。

日本企業は、輸出許可の回復だけで安心しないほうがいい。見るべきなのは、許可が何件出たかに加えて、鉱山権、備蓄、外資審査、上流投資、同盟国案件の長期契約がどう動くかである。レアアース問題は出口のニュースに見えるが、実際のレバーは入口にも作られている。

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